にんにくを知る
にんにくの効能と歴史
およそ六千年前から人々の健康を
支えてきたにんにくの歴史をひもときます。
野菜の王様にんにく
あの「タミフル」も植物を使った治療薬!
長い人類の歴史のなかで、薬とはすなわち薬草のことでした。
現代でも、薬草が本来もる力が医療に役立っています。
例えば、インフルエンザ治療薬(タミフル)は、中華料理で果香辛料となる「八角」の成分「キシミ酸」を、合成原料の1つとして使用されています。
ほかにも、植物が治療薬となる例があります。
世界最初の文明を築いたシュメル人が残した粘度板には、約10種類の薬を使用したと記載があります。
そこには、ヤナギ(解熱、鎮痛)・モミ(殺菌、鎮痛、利尿、動脈硬化予防)・西洋ナシ(便秘改善、心筋、脳梗塞予防、がん予防)などについてかかれています。
古代から薬草として親しまれてきた植物には驚くべき力が備わっているのです。
↑古代エジプトのピラミッド内部には労働者へ与えたにんにくの数量を書き残してある。
ニンニクの成分については、1936年に故小秦博士が「スコルジニン」を発見、抽出に成功し、科学的解明が大きく前進しました。
にんにくの成分を投与したマウス(左)は、投与しないマウス(右)に比較して、四倍も泳ぎ続けました。
約3000年前の古代エジプトのピラミッドは、20年以上の歳月をかけて、2トン以上の石を200万個使い、炎天下の下で20万人の労働者達が築きました。
古文書(パピルス)には、にんにくがその労働者に与えられていた事や労働者以外にも健康維持に利用されていた事が記されています。
エジプトから地中海を経てギリシャに伝わり、ここでは医学の父ヒポクラテスが、にんにくのを積極的利用を唱えたと言います。
日本にはインド、中国を経て奈良時代に伝わりました。主に薬用でした。
江戸時代における最初の百科事典「和漢三才図会」(1713年)には、青森のにんにくは大きく直径2寸もあると述べています。
にんにくの名前と由来
ガーリック(英名)は、その葉の形状からアングロサクソン語で槍(ger),辛い味(leak)の意味です。
日本名のニンニクの語源ですが、二つの有力説があります。
一つは、その強い匂いからきたという説で、ニホヒニクム(匂悪・匂憎)が縮まってニンニクになったとするものです。またカニホヒニク(香匂憎)からという説もあります。
もうひとつは、がまん(忍辱)という仏教用語から出たとするもので、こちらが通説になっているようです。
健康維持のために臭気を堪え忍んで食べると言う意味です。
にんにくの名称と方言
ニンニクは日本の古名では大蒜(おおひる)、朝鮮ではピル、漢方では大蒜(たいさん)、古名では葫とも書きました。
最近はあまり耳にしなくなりましたが、各地方には次のような方言がありました。
ニニク(島根・広島)、ニニグ(秋田)、ニニョグ・ニニョゴ・ニンニョゴ・ニンニョグ(津軽)、ネネク(島根)などです。
にんにく発祥とその歴史
にんにくはユリ科の多年草で原産地は中央アジアと言われています。
古代エジプト時代
紀元前1300年ごろのツタンカーメンの墓の中から発見されたのが最初であるとされています。
2〜3000年前の古代エジプトのピラミッドは20年以上の歳月をかけ2トン以上の石を200万個使い炎天下の下で20万人の労働者達が築きました。
古文書(パピルス)には、にんにくがその労働者に与えられていた事が記されています。
クフ王が建造したピラミッド内部の壁画には、労働者がにんにくを食べ厳しい労働に耐えている姿が描かれています。
また、ニンニクは食料以外に、肉類や魚類の保存にも使われ毒蛇や害虫によるかみ傷にたいしてもニンニクを塗りつけるなど利用していたといわれています。
バビロンの空中庭園ではすでににんにくの栽培が行われていたとの記録があります。
エジプトから地中海を経てギリシャに伝わり、ここではヒポクラテスがにんにくの利用を薦めたと言います。
古代ローマ時代
古代ローマ時代になると、ニンニクは遠征に出かける兵士たちの体力維持に欠かせない野菜となっていました。
古代ペルシャ王の食卓には、ニンニクが毎日出されていたと記録が残っています。
朝鮮最初の医学書「東医宝鑑」(1613年)にも、にんにくの利用をすすめる記述があります。
日本へ
日本にはインド、中国を経て飛鳥〜奈良時代に伝わりました。
代十代の崇神天皇時代に、健康で長寿になれる草根木皮がないか、あるとすればどんなものかを採取させるため、朝鮮からの帰化人を朝鮮に渡らせ、済州島から他の植物と一緒に持ち帰られたと、日本の歴史には示されています。
西暦四百年頃の応神天皇時代の古書『古事記』にはすでに、にんにくの利用が記されています。
古事記
奈良時代の『万葉集』には二杯酢の中にすりおろしたにんにくを入れ、鯛の刺身をつけて食べると、とても美味しいと言うような食べ方が記されています。
万葉集ではニンニクの利用方法、ことにニンニクのおいしい食べ方が強調されています。
万葉集
『宇津保物語』には、妊婦の体力回復に有効であると、妊婦の体力回復と赤ちゃんの健康管理に、にんにくが非常に良い食べ物であると位置づけています。
源氏物語にも、「極暑の薬を用いたので会えませんが、承りましょう」 としています。
源氏物語
江戸時代の百科事典「和漢三才図会」
江戸時代における最初の百科事典「和漢三才図会」(1713年)には、青森(奥州津軽市)の大蒜(にんにく)は大きく直径2寸もあると述べています。
近代におけるにんにく
さらに、1940年代にはアメリカとスイスの学者によって「アリシン」が発見され、ニンニクパワーが証明されるに至ったのです。
1990年アメリカの国立がん研究所(NCI)を中心に、野菜や果物の成分を科学的に解明するプロジェクト「デザイナーフーズ計画」は、当時約20億円の予算で、フィトケミカルの研究が行われ、その結果を約40種類の野菜、果物を重要度順に区分し、リスクを減らす野菜をピラミッド型にして発表しました。
その中でニンニクはもっとも重要な品目としてピラミッドの頂点に分類されています。
『National Institutes of Health』(アメリカ国立ガン研究所)
にんにくを食べたあとの口臭の対処法は?口臭対策と臭くならないにんにく紹介
中華料理、イタリア料理、フランス料理など、世界各国の料理に欠かせないにんにく。
世界中で愛されているにんにくは、毎日の食卓に欠かせない香味野菜ではないでしょうか。
しかし気になるのが、食べた後の口臭ですよね。
できることならランチの時間にガッツリ食べたい時もあると思いますが、なかなか難しいのが現実です。
そこで今回はにんにく臭の原因からにんにくを食べた後の対処法を解説します。
また、にんにく特有の刺激臭が発生しない「黒にんにく」についてもご紹介していきます。
にんにく臭はいったいどのくらいで消えるのか。
にんにく臭の効果的な対処法はどのようなものなのか。
特に対処法はすぐにでも実践できますので、ぜひ最後までご覧ください!
そもそもにんにく臭の原因は?
にんにく臭の原因がどこから来るものか疑問に思ったことはありませんでしょうか。
その答えはアリインという成分によるものです。
にんにくを細かく切ったりすり潰したりすることによって、アリインがアリシンという成分に変化し、臭いが発生します。
アリシンは主に口の中に残った食べカスが口臭の原因となるのですが、概ね3時間程度で消えます。
しかし、にんにく臭は翌日まで持ち越すことがありますが、それはにんにく成分が体内に入り成分が更に変化することによるものです。
にんにく成分の主な変化はアリイン→アリシン→ジアリルジスルフィド→アリルメチルスルフィド(AMS)となります。
AMSへと変化したにんにく成分が色々な消化器官に入ることで、強い口臭へと変化していきます。
食べた量によって違いがありますが、AMSが体内から完全に消えるのはおおよそ48時間かかると言われていますので、にんにくを食べる時は注意しましょう。
にんにくを食べたあとの口臭はどう対処する?
ここからはにんにくを食べたあとの口臭対策を具体的に見ていきます。
にんにくは大好きだけど、臭いが気になって食べられないのは残念。
とても美味しいにんにくですが、残念ながらにんにくを食べた後の口臭を完全になくす事は不可能。
しかし、適切な対策をすることでにんにくを食べたあとの口臭を減らすことができます。
食前に対策を取る方法から食後の対策など、にんにく対策は多岐に渡ります。
ここからは、にんにくを食べたあとの口臭対策を5つ紹介します。
いずれも手軽に対策できる方法ですので、ぜひ実践してみてください!
緑茶を飲む
にんにくを食べる際、食事と一緒に緑茶を飲むとにんにく臭対策に効果的です。
お茶に含まれるポリフェノールの一種である「カテキン」に消臭・殺菌効果があるため、にんにくの臭いを抑えることができるのです。
特に濃度が濃い緑茶ほど、より多くの茶カテキンが含まれていることから、よりにんにく臭に効果的と言えます。
しかし、なかなか食事中に緑茶を飲む習慣がなかったり、食事と合わない場合は食後に飲んでも効果を発揮しますので、安心してください。
緑茶を飲む際、ペットボトルの緑茶も効果がありますが、茶葉から淹れた緑茶の方がより効果が期待できます。
よって、本格的ににんにく臭を抑えたい時は、ぜひ急須で淹れた緑茶を飲むことをおすすめします。
牛乳を飲む
2つ目のにんにく臭対策として、牛乳を飲むことです。
牛乳に含まれているタンパク質&脂質は、にんにく臭の原因である「アリイン」を包み込みます。
そして、包み込む作用によって「アリイン」を減少させる働きが起こり、臭い対策に効果を発揮します。
また、牛乳の脂肪分と揮発性の臭い成分が結び付くことによって、不揮発性の臭わない成分に変化します。
この変化によって臭い成分が揮発しないため、にんにく臭の発生を抑制することへと繋がっていくのです。
中でも、タンパク質を多く含む低脂肪乳を食前に飲むことでより効果的と言われていますので、にんにく料理を食べる際は、事前に低脂肪乳を飲むようにしましょう。
りんごジュースを飲む
3つ目のにんにく臭対策として、りんごジュースを飲むことです。
りんごジュースを飲むことで、りんごに含まれる「りんごポリフェノール」がにんにくの臭い成分である「アリシン」と結合することで、臭いを減らしてくれます。
食事の間や食後に飲むことで、にんにく臭を効果的に軽減してくれますので、小さなお子さんも無理なくにんにく臭対策ができますね。
りんごジュースだけではなく、りんごそのものでも効果があります。
皮に近い部分にりんごポリフェノールがたくさん含まれているので、皮ごと食べるとより効果的です。
コーヒーを飲む
4つ目のにんにく臭対策として、コーヒーを飲むことです。
コーヒーには「クロロゲン酸」などのポリフェノールが含まれています。
このポリフェノールが、アリシンと結びついて臭いを軽減してくれる働きをしてくれるのです。
「クロロゲン酸」はタンニンの一種であり、強い消臭効果があるのが特徴です。
中でも、アメリカンコーヒーはタンニンが多く含まれていることから、ニンニク臭対策には大変効果的と言えます。
にんにく料理を食べた後、食後の1杯としてコーヒーを飲むことで、翌日のにんにく臭が抑えられますので、食後はコーヒーを飲むことをおすすめします。
チョコレートを食べる
5つ目のにんにく臭対策として、チョコレートを食べることです。
チョコレートにはポリフェノールが含まれているのは、周知の事実ですね。
そのポリフェノールが口の中に残っているにんにく臭を抑えてくれるのです。
チョコレートとにんにくはなかなか結びつきませんが、にんにく料理を食べたあとコンビニエンスストアに寄ってチョコレートを買うことで手軽に抑えることができます。
チョコレートに含まれるポリフェノールの効果によるものなので、チョコレートを買う時はできるだけ高カカオのものが効果的です。
にんにく料理を食べる日は事前にポケットに忍ばせておくのも良いですね。
口臭が気にならないにんにくは?
ここまで、にんにくを食べた際に発生するにんにく臭の対処法に関して解説してきました。
しかし、できることなら臭いを気にせずにんにくを食べたいものですよね。
そこで、ここからは口臭が気にならない黒にんにくをご紹介します。
黒にんにくは白にんにく特有の刺激臭がありませんし、口臭もしません。
その理由は、臭い成分である「アリシン」が黒にんにくの場合ほぼ消えているからです。
黒にんにくは白にんにくを熟成させて作るのですが、その熟成の過程で「アリシン」が消滅します。
その代わり、熟成することで糖度が高まり、芳醇で甘酸っぱい匂いへと変化します。
味もフルーティで食感も柔らかくなることで、白にんにくよりも大変食べやすいのが特徴です。
では、熟成をすることでアリシンが消えた黒にんにくは、栄養面はどのようなものがあるのでしょうか。
代表的な栄養素として3つあります。
ポリフェノール
・チョコレートやワインに多く含まれるポリフェノール
・抗酸化作用が高く、動脈硬化の予防にも効果があり
・免疫力を高める効果もあることから、日常的に摂取することで生活習慣病の予防にも効果を発揮
Sーアリルシステイン
・アミノ酸の一種で、にんにくだけに含まれている希少な栄養素
・熟成をすることで含有量が大幅に増える性質を持ち、白にんにくよりも多く含まれている
・主な効果は動脈硬化の予防や、高血圧の改善、疲労感の軽減
アルギニン
・アミノ酸の一種手、成長ホルモンの分泌を高める
・健康な骨や筋肉の生成だけでなく、代謝の促進や疲労回復にも効果あり
以上のことから、黒にんにくには白にんにくに比べて熟成する過程で栄養素が増える傾向が見て取れます。
では続いて、黒にんにくの美味しい調理法を見てみましょう。
黒にんにくドレッシング
刻んだ黒にんにくをオリーブオイル、酢、塩コショウの中に混ぜる
調味料
・醤油の中に黒にんにくを漬けることで、甘酸っぱく香り高い醤油へと変化
・刻んだ黒にんにくを味噌と混ぜて合わせ調味料に
サラダのトッピング
刻んだ黒にんにくをサラダにトッピングすることで、いつものサラダがフルーティーに
そのまま食べる
白にんにく特有の刺激臭がなく、フルーティーで柔らかいため、そのまま食べることで黒にんにくの美味しさを丸ごと味わえます
他にもフルーティーで甘酸っぱい黒にんにくはさまざまなお料理へのアレンジが可能です。
ただ、食べ過ぎにも注意が必要です。
非常に食べやすいため、たくさん食べたくなってしまいますが、食べ過ぎることで胃痛や下痢を引き起こすこともあります。
よって、1日の摂取量は平均1〜4粒とされていますので、体調や体質に合わせて摂取量を守るようにしましょう。
まとめ
どうしても食べた後の口臭が気になってしまうにんにく。
今回はにんにく特有の臭いやにんにく臭への対策を解説してきました。
そして、にんにく臭を気にせず食べられる黒にんにくの魅力についても迫りましたね。
特に黒にんにくにはたくさんの栄養素が含まれているので、できることなら日常的に摂取したいものです。
フルーティーで甘酸っぱい香りと柔らかい食感は、毎日の健康を支えるのに大変ありがたい味わいです。
臭いを気にせず食べられる黒にんにく、ぜひ毎日の健康習慣に加えてみてはいかがでしょうか。